「農家の就労人口減少」を見ていくと、多くの労働者が陥り解決できていない本質的な「心」の問題が見えてくる。




本日、長野県のりんご農家を実家に持ちつつ、農家の6次産業化を推進するベンチャーを営む方とお話をしてきました。

6次産業って、ご存知ですか?
農林水産省では、この言葉を以下のように定義しています。


農林漁業者(1次産業)が、農産物などの生産物の元々持っている価値をさらに高め、それにより、農林漁業者の所得(収入)を向上していくことです。生産物の価値を上げるため、農林漁業者が、農畜産物・水産物の生産だけでなく、食品加工(2次産業)、流通・販売(3次産業)にも取り組み、それによって農林水産業を活性化させ、農山漁村の経済を豊かにしていこうとするものです。

「6次産業」という言葉の6は、農林漁業本来の1次産業だけでなく、2次産業(工業・製造業)・3次産業(販売業・サービス業)を取り込むことから、1次産業の1×2次産業の2×3次産業の3のかけ算の6を意味しています。言葉の由来は、東京大学名誉教授の今村 奈良臣(いまむら ならおみ)先生が提唱した造語と言われています。

ー消費者相談 - 農林水産省
http://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/1202/a04.html


簡単に言うと、生産・加工・流通の全てに農家さんが取り組むことですね。

この背景としては、単純に生産するだけでは雇用も所得を十分に創出することができず、それが原因でさらに人もお金も入ってこないしどんどん小規模な事業になっていくとネガティブサイクルが働いてしまうという現実があるからだそうです。


さて、前提情報の紹介はこのへんにして、話を進めます。

こちらの方とお話している中で、とても気になることを聞いてみました。
 「私よく知らないで聞くのですけれど、農家さんの就労人口ってすごい減ってますよね?農家さんのことはそこまでわからないですが、私の生まれた秋田の能代ってとこに帰るたびに人が減ってるような気がするし、昔がよく見かけた野菜とかがもう買えなくなってるんですよ。どうなんでしょう?」

すると、思った通りの答え。
 「ですね。減ってます。」

もっと聞いてみました。
 「どれくらい減ってるんですか?」

そこから怒涛のお返事が。
 「具体的な数字ですか。以前、とある年度に私が就労支援をして農家さんに入っていった方が2000人くらいいるんです。でも、もうだいたい辞めてますね。違う農家さんに転職した人もいれば、もはや農家さんを辞めて別の仕事についている人も多いです。」

さらに聞いてみました。
 「なんでですか?お金が少ないとか、住む環境が悪いとか?」

彼は、こう答えました。
 「そういうのもあるんですが、結局は人なんですよ。地方で農家に新たに入っていく人って、まあ若い人が大半なわけですよね。でも、同じ農家さんに同年代の人がいるかというと、いないんです。同期という概念もないし、同じ話題を話せる仲間もいない。そんな人がいないと、どうなると思います?」

私は、私の仕事と紐づけて答えます。
 「組織でもよくある話ですけれども、同じ感覚で話せる人、なんでもさらけ出して話せる人、そんな人がいないと気が滅入っちゃったり、どんどん心が辛くなっちゃいます。結果、辞めていくとか休職するとかいう方も増えてくるかと。農家さんも一緒ですか?」

彼は、続けます。
 「そうなんです。結論、辞めるんですね。辞めるとどうなるか。人が足りなくなって農家さんの規模は縮小しなくてはならなくなり、さらに小規模化が進みます。ただ、うまくやってるところもあるんです。何人もいる比較的大きなところでは、辞める人がいても、しっかりと業務とかも知っててなんでも聞いてくれる人が残っていて新たに入る人をなじませてくれるんです。そんな彼が辞めるタイミングが来ても、また残る人がいて、そのサイクルが回っていくと。それはある意味良いことではありますけれど、でも辞める人は絶えないんですよね。」
 「やはり、外のことをたくさん知れるということは、外に出る確率をあげますよね。得てして、中より外の方が魅力的に見えますしね、、。だから、そんな違うところで働く人どうしが交流もできるシェアハウスとかも作り始めているところもありますね。農家同士だけど、違うところの外部の人と色々話せるのは、本当に彼らの気持ちを救ってるみたいです。」

 「あともう1つ。農家になると、それ以外の世界をみることがとても難しいんですね。転職しようとして外の世界をみることはあるけれどもそれ以外で他の世界の人に会ったり話したりすることがないんです。そうすると、どうなるか。より視野が狭くなって、仮に話す機会があったとしてもさらに同じ業界の人としか付き合わないんです。」
 「6次産業化と言われていますが、実現しようと思ったら全然違うこと・新しいことに取り組んでいかないとそもそも実現なんてできないんです。でも、全然違う世界の人と会わないし話さない。会ったとしても過去の友人。そりゃ、1次産業を出ることって難しいですよね。」


彼とはその後も会話し続けたわけですが、実家がりんご農家だからこそその声には力がこもっていて、なんともうまくいけばいいなと思っていました。


彼のこの話、農家に限りませんよね。

組織なんて、完全にそうです。
大きい組織にいればいるほど外部との接点を持つことがなかなか困難です。その中で大変なこととか誰かに相談したいことを全然声に出すこともできず、SNSで毎日繋がる過去の友人にそれを告げるわけです。そして、SNSであたかも輝いているかのような生活を送る過去の友達の投稿を見て、それに憧れ、自分も外に出たほうが良いと感じます。気がついたら、会社からの帰り道でリクナビのアプリをダウンロードして転職相談の予約を入れる、、、
そんな人はゴマンといるでしょう。

私が昔いた茶道の世界もそうです。
ある意味プロフェッショナル化するからこそという側面もありますが、どうしても見る世界が内に内に向かいます。
茶道の世界、茶室の世界が正義で、それ以外が淘汰されます。他の世界を見るということなんて、ほぼありません。
そうしつつもどんどん注目されないし人口も少なくなる中で、それを解決するために助けてくれそうな国の助成金や施策に頼り始め、守るべきものだからとよく分からぬ理論をつくる、、、
そんなところが大半です。


声を出したいのなら、聞いてくれる人を外に見つけるべきではないでしょうか。
知ってほしいのなら、広げられる人を外に見つけるべきではないでしょうか。

でもそんな人を見つけようとせず、内に向かい、本質的な解決にならないが気軽に頼めるところに頼みます。
それをしたところで、根本的に問題が解決するわけでもないのに。


もちろん、本質的なところを常に把握しながら生活することはとても困難です。

とはいえ、そこを理解することができたら、1人1人の行動が変わると思いませんか?



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