自分の「大切にしている考え」を分かりやすく人に伝えるために、やるべきたった1つのこと。


昨日午前11時のオフィスでのこと。
IKEAで購入した木の色がほっこりするテーブルを5人でぐるりと囲んで打ち合わせをしていました。

そこで話していたのは、「自己紹介って、どうしたらもっと自分のことを上手く伝えられるのかな?」ということ。
というのも弊社では一緒に業務委託で働いてくれる方を募集しております。その説明会は週に3〜4回くらい開催することもあり、人の前で自己紹介をする機会が比較的多かったりするのです。

で、ずっと説明会をしてきて、こちらの問いが出てきたわけです。
「自己紹介って、どうしたらもっと自分のことを上手く伝えられるのかな?」


その打ち合わせでは、1人1人が2〜3分くらいで初対面の方に対して行うような自己紹介を行いました。
その自己紹介を他の全員で聞いて、フィードバックするのです。

「いやあ、その内容とても良いと思うんです」
「2つエピソードがあると言ったけど、1つ目のほうをもっと濃く話しても良いのではないですかね」
などなど。

そんな時、「自分がなぜこの会社で働いているのかを自己紹介で表現したいよね。自分の大切にしている価値観や考えを表現するためには、何が大事なのだろうか?」
という問いにぶつかりました。

なんやかんや議論しつつ、みんなで「ウンウンそうだよね」と納得し合ったのが、
『瞬間を切り取って伝える』ということ。


もっと具体的に言うと、過去の経験の中で、今の自分にとても強い影響を与えているであろう印象的な1シーンを、聞いている側がはっきりと脳内で映像を再生することことができるように話す、ということです。



でも、『瞬間』と言っても分かりにくいですよね。
2つほど、例を挙げてみましょう。


まず1つ目。
ご存知の方が多いのではないかと思いますが、糸井重里さん。
日本を代表するコピーライター、そして現在は『ほぼ日刊イトイ新聞』を運営し、最近上場もしましたね。

彼の『ほぼ日刊イトイ新聞』を見てみると、本当に頭の中で描けるようなシーンの宝庫。
ぜひ見てみていただきたいのですが、例えば本日更新されている『今日のダーリン』というコラムの一部を引用してみましょう。


 いつでも、飽きたらやめる、めげたら休む、
 という感じで続けているのですが、
 ぼくは、じぶんなりの運動をしています。
 ひざをついての腕立て伏せと、スクワットです。
 もちろん、無理をするほどやってませんが、
 風邪をひいたりするとやる気が失せてしまって、
 しばらく休むことになります。
 そして、また、やりはじめることになります。

 どうして続いているのか、よくわかりません。
 朝と寝る前とに体重を計ることと、 
 この簡単な運動は、やめたくないような気がしてます。
 健康のためというより、
 女性で言う美容のためのほうが近い感覚です。
 わりにだらしのない性格ですから、
 油断するとぐずぐずになってしまうのです。
 ほんとうにぐずぐずになる、というのはいやなんです。
 身体は、こころにも大きな影響を与えていますから。

 今日のダーリン - ほぼ日刊イトイ新聞
 http://www.1101.com/home.html


糸井さんの写真を見たことがある方なら想像しやすいかもしれませんが、スウェットを着た糸井さんが、部屋の中でちょっと面倒くさそうにしながら腕立て伏せとスクワットをしている姿が見えてくるようです。
そして、できない日には若干「またできなくて嫌だなあ」と思いながらも、毎日体重計にのることだけは続けて、体重を見て一喜一憂しているお姿も頭の中に浮かんできます。

ああ、そんなお人なんだなあ
という糸井さんの輪郭が見えてくるような気がしませんか?



もう1つ、例を出しましょう。

千利休の逸話で、「朝顔の茶会」というものがあります。

「朝顔」は小学生の頃に夏休みの宿題で観察日記をつけていた方も多いのではないでしょうか。今ではごくごく普通の花ですが、千利休が生きていた当時、「朝顔」というものはとても貴重な花だったそうなのです。

その貴重な朝顔がたくさん咲いている庭があると。
それを当時の天下人である豊臣秀吉はどうしても見たいと千利休に言うんですね。千利休は分かりましたと、秀吉が来る日取りを伺い、準備しておくと告げるわけです。

その当日の朝、豊臣秀吉が庭を訪れてみると、なんと朝顔の花は一輪も咲いていないのです。そこには花のない朝顔、要するに蔦だけしかないのです。
「利休め、嘘をついたな!」と秀吉は怒り狂うわけですが、その庭にある茶室の中を覗いて唖然とするのです。

茶室の中に、一輪の朝顔の花が入れられているのです。

それを見て秀吉は、「利休め、あいつやりおった。」と悔しく思いつつも、その美に対する考えの強さ深さに強く感嘆するわけです。

秀吉は利休の意図を瞬時に汲み取るわけですが、利休は一体何を考えていたのか。

美しい花と言われている朝顔がたくさんあっても、その一輪一輪の美しさには到底気づけない。その一輪一輪の美しさこそ、大切なもの。だからこそ、秀吉が来る前に庭の朝顔の花は全部摘み取ってしまって、茶室に一輪だけ入れて、その一輪のみで、朝顔の本当の美しさを伝えたのです。

千利休が表面的な美しさではなく本来ある美しさを大事にしたいと考え、あえて怒りを買うかもしれないことをしてまでそれを実行する。
彼のそんな芯の強さ、美に対する執着心を感じるエピソードです。



糸井さんと千利休の例を挙げてみましたが、いかがでしょうか。
それぞれ、その瞬間を切り取った話です。
ほんの些細な短い文章ですが、この話だけで彼らの「大切にしている考え」の輪郭がはっきり見えてくるようではありませんか?

これは、ご自身の「大切にしている考え」をはっきりさせるときにも、他者にはっきりと伝える時にもとても有効な手段です。

ぜひ、ご自身の過去を思い返して、とても印象的だった『一瞬』を切り取ってみてください。
そして、その『一瞬』を相手も体験するかのように話してみてください。
きっと、今のあなたが「大切にしている考え」が相手に伝わるはずです。





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