1人目の社員だからこそ、自分のためでなく組織のためで在るべきなのではなかろうか。




去年の夏くらいだろうか。
とある100名ほどのベンチャー企業に社員一号として入社していた方と会話していた時のこと、私は彼に『社員一号で入ってるからこそ、他の社員が入ってくる時に怖かったりしませんか?』と相談したことがある。


彼とは10歳以上離れているのだが、私が学生の時に偶然出会って、中高が同じということでよく相談にのってもらっていた。
そこでその時に話したこの相談は、それまで私が結構悩んでいたことであった。
今日はそれについて書こう。


私は3年ほど前、今の会社に社員一号として入社した。
その頃、フルで入っているのが社長しかいなかったので、最初は常に社長と2人っきりという状況。

その頃の私は社会人1年目、社長は40歳ということで年齢にはかなりの差があり、年齢だけでなく、もちろんスキルや経験、思考力などなどあまりにも差があった。

よく言う話だが、ベンチャーではえてして後から入ってくる社員のほうが優秀だということが多い。
私も多分にもれず、というか私以降に入社する面々は社長と同世代以上で、ほぼ働いたことのない私と比べたらできることが多すぎた。


そうなると新たな社員が入社する度に何が起きるか、お分りだろうか。
私がひたすら必死にやっていた仕事が、するっと新たな社員に手に渡るのだ。
当然のことだが、そのほうが成果も大きくなれば、スピードも早い。

『自分の能力がないせいだ』
『でも知識も経験もないのはどうしようもなくて、自分は何をしたらいいのだろう』
『自分が持っていた役割を外された、、ええまじか、、、』
『新しい人が入ってくると、自分のポジションがどんどん奪われていく』
というように思考することが当初多かったのを記憶している。


どのようにそれを解決するのか。
私の場合は、一番初めから会社にいるからこそ分かること・できることや、自分が行うことが組織としての生産性が一番高まること、自分がメンバーの中で一番得意だと思うこものをなんとか確立していくことで組織内での自分を創っていった。


だが、ずっと疑問でもあった。
『これから時期を経て、仮に弊社が大きくなるのであれば、基本的に私と同世代なんて入らないだろうし、どんどんスキルフルな人が入ってくる。その時、私はどんなことをしていくのだろうか。』


だからこそ、冒頭で記した方に会った時、聞いてみたのだ。
『社員一号で入ってるからこそ、他の社員が入ってくる時に怖かったりしませんか?』と。


彼から返ってきた言葉は、私にとってとても新鮮なものであった。

「怖い?いやいや、そんなことないよ。どちらかというと、僕はそれがすごく嬉しいことだったんだ。」

「嬉しい、ですか?」

「うん、だって、僕が入社した時も北村君の最初と同じく、何もなかった。だから僕もいろんなことをたくさんやってきたんだけど、でも分からないことだらけだったし、知らないことも多ければ、そもそも苦手なこと、正直やりたくないこともたくさんあったんだよね。しかも、それに成果が伴わないとまた最悪。」

「なるほど、確かにそうですね。」

「でも、後から人が入るとさ、みんな専門性が高くてね。僕が1人でやってうまくいかなかったこととかそもそも手をつけられてなかったところをたくさんやってくれて、経営陣も僕もどんどん楽になったし、会社としての成果がどんどん出るようになったんだよね。それってすごくない?もうね、『助かったー!もっとやってやって!』って感じだったんだよね。」

「その面ではそうかもしれないですけれど、ポジションが社長から遠くなったり、できる範囲が狭くならないですか?」

「うーん、そうかもしれないんだけど、僕そういうの結構どうでもいいんだよね。その人が入ることで一部分がもっと良くなるということは組織の発展に寄与するだろうし、そうなったらさ、いいと思うんだ。しかも、僕もより一層好きなことだけに注力できるしね。笑 」


それ以来、彼からそんな話を聞いて、私も考え方を変えた。

自分がどうこうじゃなくて、組織のために。
自分が好きなことを通して、自分ができる貢献を組織に。


彼は今年の春に自分が組織の中でやることは終えたから次に行く!と言い、気がつけばアルピニストをしながら人材育成の会社を立ち上げたらしい。


社員一号で入っているからこその悩みや迷いというのがあるように、私は感じている。
とすると、「一号の会」みたいな(なんだか機械チックだが)場があると、かなり良き学びの宝庫になりそうな気がしている。
ニッチだしあまり見当たらないけれど、経営陣以外も在籍する全企業に存在はずである。(結構面白そう)

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