「どんどん関わる人口が減り廃れていく文化を守る必要ってあるんでしょうか?」という問いに対して。
昨日、会社としてインバウンド事業をするか否か決断をそろそろ下そうとする方からインタビューを受けた。
実際に日本の文化や伝統などに詳しい人からの意見が欲しいとのこと。
今そこまでやっているわけではないので詳しいかは分からないが、一時期はひたすらにやっていた者として、話せることをお話してきた。
終わったあと随分と感激してくださり、本業でそちらの経験や知識を出すことがほぼかけらもない私としては、個人的にとても新鮮であった。
その中で質問された1つを挙げよう。
「どんどん関わる人口が減り廃れていく文化を守る、広げようとする必要ってあるんでしょうか?」
価値がないという者、価値があるという者、両者いるだろう。
■廃れるものは、今必要とされていない。これからも必要とされない。と言う者。
作り手を始めとして携わる人は確実に減少傾向にある。
少し前のデータだが、伝統工芸品産業に関しての経産省のデータを一部引用しよう。
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g80825a07j.pdf
こちらで書かれている課題がこちら。
1. 需要の低迷
2. 量産化が困難
3. 人材、後継者の不足
4. 生産基盤、原材料、生産用具などの減衰・深刻化
5. 産地の知名度の不足
秋田生まれ(幼少期しか住んではないが)の私からしても、これはかなり肌感がある。
生花の近くにある、百年以上続いていた「春慶塗」の家がどんどん潰れ、祖父の木材商の周りにあった「曲げわっぱ」の家も消えてなくなった。
実際、今も作り手・関わる人は減少している。
そして明白なのは、それを買う人の数も減少しているということ。
人に求められていないものなんて、守る必要も広げる必要もなく、消えても良い。
確かにそんな意見は至極まっとうだ。
人が知ろうともせず、目も向けない文化や工芸なんて、価値のないもの。
人から求められることが価値だとするなら、今の文化や伝統の価値は昔と比べられるような状態ではない。
■長年続いているのは大切だという証拠。そしてこの独自に育まれてきた文化はかけがえのない貴重な存在。と言う者。
よく言う話だが、島国として歴史を続けてきたこの日本において、文化は独特な道を進んできた。この国の文化は素晴らしいもので、海外から求められている価値あるものである。
http://www.media-japan.info/?p=1184
実際、私が過去にAirbnbで出会った海外から来た観光客の方とお話している中で茶道や書道などの話をしたり実際に一緒にやってみると、とても楽しみかつ感激してくださる方はとても多かった。
また、他にも海外の学生向けに三味線と茶道のワークショップをしたり、トルコの道端で茶道をした時なども、誰しもが声を震わせ興味を持ち「自分もやりたい!どうやったらいいの!?」と前のめりの方ばかりだった。
過去があるのだから、今がある。
それらの歴史があるから、これからの未来を描くことができる。
この文化はこの国の価値であり宝なのだし、これからも守りながら世界中の人に伝えて、見て知って触れて得てもらえるようにしなければならない。
■価値の有無の議論の果てに
上記に挙げたような意見はほんの一部の切れ端でしかないが、はるか以前から話されてきた内容である。
こんな内容に関連して、岡本太郎さんの『日本の伝統』という本を引用しよう。
記憶の中の言葉なので正確に引用できなくて恐縮だが、こんなことが書かれていたのを思い出す。
『文化は、その時代ごとの要請に伴って創造される。』
日本の伝統 (光文社知恵の森文庫)
どんな国のどんな文化も歴史も、その時にその場所で生きる人が豊かに生活するために創られた媒体である。
そう考えると、この「どんどん関わる人口が減り廃れていく文化を守る、広げようとする必要ってあるんでしょうか?」という問いに対して、どのような返答をすることができるだろうか。
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