会話における微妙な認識のズレを無くしたい時、即座にできる2つの解法




本日京都にて、とある能楽師の方とお話をしている時のこと。
彼女はこんなことを言っていた。

「先日インタビューを受けまして、その時に気がついたことがありました。お話した内容と、それを書き起こしてもらった記事だと、ニュアンスに微妙な誤差があるんです。自分が話す内容と、相手が受け取る内容には、どうしても差が生まれます。」


さて、上記の話を元に、人と人が話す時の構造を考えてみよう。
AさんとBさんが会話をしていると仮定する。
その時起きていることは、以下のようにまとめられる。

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Aさん:心で感じる→脳で考える→口から言葉として発する

Bさん:耳からその情報を取り入れる→脳内に取り入れる→心に留める→思い返す→脳から指令を出して文字にする(言葉にする)
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多少荒いが、記してみると何段階もAさんとBさんの中の体内の回路を通過していることが分かる。

このように様々なものを通すというのを考えてみると、とある仮説が生まれてくる。

「1人と1人の相互の会話だとしても、伝言ゲームのように、気がつけば最初の情報と最後の情報が全然異なるものになるのではないか」


これ、ぜひみなさんも思い返してほしい。
以下にとても簡単な例を挙げてみよう。

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Xさん:「この事案について、明日Zさんに伝えておいてほしいんです。あと、その後にどのような手順と期日で進めるか聞いておいください。」
Yさん:「なるほど、わかりました。」
〜翌々日〜
Yさん:「Zさんに伝えておきましたよ。」
Xさん:「Zさん、なんて言ってました?」
Yさん:「最初は--------で、次は--------で、最後に--------とのことです。」
Xさん:「期日はどうです?」
Yさん:「明後日から23日だそうです。」
Xさん:「全体の期間はそうなんですね。それぞれの期日はどうですか?」
Yさん:「え、期間じゃないんですか?全体のだけあればいいのかなって思ってました。」
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この2者は、単に期日と期間と言う言葉のずれが生じている。

上記の流れに当てはめると、
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Aさん:心で感じる→脳で考える→口から言葉として発する

Bさん:耳からその情報を取り入れる→(※)脳内に取り入れる→(※)心に留める→(※)思い返す→(※)脳から指令を出して言葉にする
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この(※)の部分で何かしらのフィルター効果が働き、自分の中で異なる言葉に置き換えられてしまっている可能性が高い。
些細と言えば些細かもしれないが、誰しも同じようなことに身に覚えがないだろうか。

実際、相手にしっくりくる言葉と自分にしっくりくる言葉はかなり違うし、1つの言葉の定義だけとっても全く異なるので、間違う可能性はどれだけ気をつけようと意識しても難しいのだ。

1人と1人の相互の会話だとしても、伝言ゲームのように、気がつけば最初の情報と最後の情報が全然異なるものになる可能性は確かに存在する。





さて、ではこれをどう解決するか。
2つ、解決方法を提示してみよう。


■解決方法1つ目

対人支援の世界で明確に存在する解決方法である。
「相手の言葉をそのまま繰り返す」いわゆる言葉のミラーリングと呼ばれるものだ。

これは、相手の話した内容をそのまま言葉を変えずに話すというもの。

例えば、こんな感じ。
Xさん:「疲れたんですよ」
Yさん:「疲れたんですね」

実に些細なものに見えるだろう。だが、ここでの履き違えを気がつかぬままやっているケースがとても多い。
例えばこんなケースだ。

<1>
Xさん:「疲れたんですよ」
Yさん:「落ち込んでるんですね」

<2>
Xさん:「疲れたんですよ」
Yさん:「お忙しいですもんね」

<3>
Xさん:「疲れたんですよ」
Yさん:「眠そうですよね」


これ、繰り返し起きると認識の違いが生まれるだけでなくストレスや不信感に繋がることが多いので注意が必要だ。

私も最近、「これの検証が〜」と話している時に相手が「ああ、これの実験ですね。」と、私が「検証」という言葉を使っているにも関わらず「実験」と言う言葉を使われた会話があった。
おそらくその言葉が持つ意味は違うだろうし、この微妙なズレで私は結構イラついていた。


会話の際にこのミラーリングを行うと、実際にはこんなことが起きる。

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Aさん:心で感じる→脳で考える→口から言葉として発する

Bさん:耳からその情報を取り入れる→同じ言葉を発する→自分の耳にも入る→脳内に取り入れる→心に留める→(※)思い返す→(※)脳から指令を出して文字にする(言葉にする)
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先ほどよりも(※)の部分が減る。つまりフィルター効果が働く箇所が減り、自分の中で異なる言葉に置き換える可能性を下げている。

このように履き違えずに話すということは、意外と意識しても難しい。
ただ、使えるようになると齟齬がとても減るので、ぜひおすすめだ。



■解決方法2つ目

次にご紹介するのは、弊社でよくやることなのだが、会話の内容をその場で文字にしてすり合わせをしていく、という作業。

これはその場の時間を多少必要とするが、齟齬が圧倒的になくなる。

話した内容を誰かがまとめて記載していき、その記載内容を改めて見返して違いがあれば指摘し、なければ次の会話にすぐに移っていく。


これを実際に行うと、実際にはこんなことが起きる。

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Aさん:心で感じる→脳で考える→口から言葉として発する

Bさん:耳からその情報を取り入れる→脳内に取り入れる→皆に見えるように記載する

Aさん:記載された内容を見る→脳内で認識とすり合わせる→フィードバックをする

Bさん:耳からその情報を取り入れる→脳内に取り入れる→改めて記載を修正する→目で確認して認識を強める
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これだと、もはや(※)の部分はほぼない。つまりフィルター効果が働く箇所がほぼなくなり、自分の中で異なる言葉に置き換える可能性はかなり下がっている。

これだけ聞くといいように思えるが、毎回の会話を全部記載するわけにはいかないし、そもそも会話の流れを分断しやすいので、仕事以外の日常の会話でやると顰蹙を買うのは目に見えているので注意が必要だ。




というように、会話の中での誤差を埋める方法はいくらでもある。

ただ、解決方法はこれだ!だからこのタイミングではこれを使おう!だなんて思っていては会話が成立しない。

気がつけばそんなことを自分もできてるな〜。なんだか話の誤差も少なくなった気がするし。
、、と思えるくらいになるように、自分でやり続けるしかないのは確かだ。








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