『1on1』の質を高めようとしても空回りしてしまう、そんなマネージャーが気づいていない落とし穴とは。




HRの領域にいる人間にとって、Yahoo!さんの人事施策はいつも刺激的だ。

例えば、『ヤフーの1on1 部下を成長させるコミュニケーションの技法』にも記されているような、全社での1on1の実施。


1on1は単なる上司と部下の1対1の面談だと認識されることもあるが、ヤフー社の人財育成リーダーである小向洋誌氏は1on1についてこんな風に語っている。

「『1on1』は、単に上司・部下が仲良くなるための時間ではありません。“明日からの自分をもっと良くするためにはどうすれば良いか”を考えるための時間です。いわば、部下の“気付き”や業務を振り返って“内省”“経験に基づく学び(経験学習)”を支援するためのものですね」
 - ヤフー人事に聞いた、進捗管理で終わらせないための「1 on 1」
https://thefirstpenguin.jp/


ヤフー社では、このような経験学習を全社に行き渡らせるべく施策を打ち、実際に今では浸透してどの部署でも行われている。

実際に気になってヤフー社に所属する友人複数人に聞きに行ったことがあるのだが、部署によってどうしても頻度の差は出てしまいながらも、どこも継続して基本週1にて行なっているらしい。しかも、皆かなり好意的だ。

本当に、すごい!と思わざるをえないような状況。
(目的、浸透のさせ方、実施の仕方など詳しいことはこちらの本をぜひ御覧いただければと思う)

http://amzn.to/2A17KJr




そんなヤフー社での1on1であるが、本日こんな気になる記事を目にした。



- ヤフーの人材育成「1on1」のせいで社員が辞めてしまう?
http://diamond.jp/articles/-/147291


タイトルを見ての通り、1on1の実施により本来の自分がやるべきことを認識し、それが自社内ではどうしても難しいことを気づいてしまうことで退職していくという事象が起きているらしい。

実際、ヤフー社でもそうなのだから、この1on1を実施したことでそのような事象が起きる会社はかなり多発しているだろう。
(現場社員に外部メンターをアサインして週1でやりとりを行うサービスを創る者として、ものすごく想像がつく)

そして、このようなことを危惧して1on1に過度に敏感になって導入を回避する会社も、あるだろう。


そして、この記事の中ではそのような事象、つまり1on1によって社員が辞めていくという状況を脱するためにできることが記されている。

簡単に記すと、『辞めさせないために、その1on1の質をさらに高めることが必要』とのこと。


これ、正直ものすごく難しい。

要するに、マネージャーがとても質の高い1on1を行えるようになることを前提としているのだ。



実際にこれが可能かというと、以下の4点がまず必要である(完全に主観だが)

・質の高い1on1とは何かという定義が必要
・質の高い1on1を行うために必要なスキルが何か、という定義が必要
・1人1人のマネージャーの、1on1を行う人としてのスキルの可視化を行う必要
・足りないスキルを可視化した上で、そのスキルをどのようにつけるかというプランが必要

まあこの4つはどんなところでも認知されるような必要性ある項目かと思われるが、
ここには大きな落とし穴がある。

まず、そもそも人と人の関係性が前提になる、ということだ。


よくある話だが、「どんな部下にも共通する、一番良いマネジメント手法とは何か?」
という質問をすると、腕の立つマネージャー陣はこう答える。

「いや、部下それぞれによって異なるのだから、一番良いものなんてないですね。人によります。」


この話にもあるように、そもそも上司と部下である前に人と人なのだから、そこには関係性、もとい相性というものがある。

つまり、最適な1on1を行うために必要なスキルって、一般論的に大きなことは言えても、結局は部下のタイプにかなりよりけりなのだ。


さて、その時に『辞めさせないために、その1on1の質をさらに高めることが必要』というのはどう捉えるべきか。

そもそもそれを確実に行うことなんて、可能なのだろうか。


答えなんてないだろうけど、これを常に我々は問いていきたい、そう強く思う。



そんなことを考えながら事業創りをしており、実は今度こんなイベントを行う。

【11/13夜 開催】YeLL/DialogueNight 〜 1on1の質を高める 〜
http://ptix.at/WLZalM

1on1を社内ではなく外部の人材と行うサービスを行う我々は、この1人と1人の相性を、それぞれの性格診断のサーベイの細かい因子の組み合わせと、その1on1の結果を全て数値化し、どんな組み合わせが最適な1on1を行えるのか、研究をしていたりする。

ある意味、『1on1を科学する』ような事業を行なっているわけだが、上記のイベントはその研究の中でようやく分かってきた内容を紹介するような内容になっている。

ご興味のある方は、ぜひご笑覧いただければ幸いである。
(もちろん、個別でのご連絡もぜひ。)



この研究、超面白いのですよ。。。

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