とある上場企業の役員が、「自分の仕事の先が見えてしまった時は、"好奇心"を掴む力が必要だ」と言った話。




とある大手物流系企業の役員の方と、恵比寿にてのんびりとお酒を酌み交わしていた時のこと。
これから先の将来のことを考えると、、、という話をしながら、彼はこんなことを言った。


「北村君くらいの年齢ならまだ、将来どうなりたいかなんていくらでも道があると思うんだよ。でも、すでに40〜50代、大手企業でずっとやってきた人たちって、もう結構これから先が見えてるんだよね。『ああ、自分は部長止まりだな』『あの人みたいな道を辿るんだろうな』ってね。今からこの会社で社長を目指そうとか、大金持ちを目指そうとか、それは厳しいって、諦めるんだ。多くの人はね。でも、それには前提にしているものがあるんだ。」

「前提、ですか」

「うん、前提。なんだかわかる?」

「自分のいる会社の中だけを考えてるということですかね?」

「それもそうかもしれないね。でも、もっと大きなものがあるんだ。それは、『仕事』の中でしか考えてないということ」

「『仕事』ですか。」

「そうそう。そんな中で考えているから、役割とか、ポジションとか、そういう話に終始する。でも、そういうことが好きな人ならいいけど、別に好きでもない人が昇進し続けたりするなんて本人からすると嫌なことだよね。そして、いくらそんな役割を得ていくことを好きだと思っても、今目の前にある仕事が好きでもない人が昇進していくなんてできないよね。」

「なるほど。確かに好きなことの方が圧倒的に生産性高いですよね。」

「そうだね。正直、うちの会社の話だと、目の前の『仕事』が好きでやってたら気がついたら経営陣になってたとか、そんな人ばっかりなんだ。でも、みんなが目の前の『仕事』を好きだなんてあり得ないよね。」

「そりゃそうですね。普通な人、そもそも嫌いな人、どちらもいます。」

「そうそう。だったら、別に『仕事』以外のところにある自分の好きなものと掛け合わせればいいと思うんだ。」

「『プライベート』で好きなこととかですか?」

「そうだね。『今のプライベート』でもいいし、『仕事を辞めたあと、80歳の時にしたいこと』とかね。なんでもいいんだ。大好きなペットのこと、大好きなゴルフのことでもいいし、はたまた将来なりたい農家のこととか、80歳で毎日していたい孫の世話でもいいんだ。それと『仕事』を掛け合わせたら、きっと好きなものになると思うんだ。」

「好きなものにならなかったら?」

「単に好きじゃないか、自分の想いに気づいていないんだろうね。」

「なるほど。」

「実際にうちの会社の人たちに聞いてみるとさ、それこそさっき話したようなプライベートとかやりたいことが出てくるんだよね。そしたらこう聞くんだ。『そうなんですね。佐藤さん、ビニールハウスの農家したいんですか。なら、そこにあるもの考えてみましょうよ。ハウス自体もあれば、ボイラーとかもあります、野菜の種とか、肥料とかもありますよね。例えばそれらをどうやったらこの物流の仕事と結べるか考えてみません?肥料の物流やったら、きっと佐藤さん、定年までに肥料のことすごい詳しくなりますし、きっとそれ以外のところにも知識張り巡らしてるから、農家になる準備が気がつけば終わってるかもしれませんよ。』」

「本人の好きなものにしちゃうんですね。でも、それって物流だからこそできることじゃないですか?他のところだとどうですかね」

「んー、僕はこの業界が長いから正確には言えないけど、他も同じじゃないかな。前いた自動車も同じだったような気がするし。自分の好きなものをやったり、自分の未来に繋がっているということにモチベーションが下がる人はいないと思う。」

「まあ、それはそうですね。好きなことができるのに、拒絶感を持って対応するってなさそう。」

「そうなんだよね。少なくとも僕のところでは、そんな話をした時に他の経営陣も含め全体で『おーい。いつ肥料の仕事作るんだ。ぜひとも早く作ってくれよう。』とコミュニケーションするんだよね。全ていいことなのかは分からないけれど、それでやる気を持って働きに戻る40〜50代は多い気がするよ。えてして仕事と好きなものを合わせるというのは否定されがちかもしれないけど、でもそれで会社とお客様のためになる仕事ができて、稼げるなら全然いいよね。自分の好きなものに関わってるのが、一番人を幸せにすると思うんだ。"好奇心"はいつになっても大切だよ。」



"好奇心"
印象的な言葉だった。

これは40〜50代に限らずどんな年代でも必要とされること。

今あなたは、どんな『仕事』をし、どんな"好奇心"を持って取り組んでいるのだろうか。

今はまだ"好奇心"の部分がなかなか分からないかもしれない。でも、すぐに分からなくても良いとも思うのだ。
考え続ければ、ふとした拍子に気がついたり、腑に落ちたり、そんなタイミングがくる。


ちょうど今は、夏。
幼少期からの"好奇心"に気がつく要素がいっぱい詰まった季節であることは間違いない。

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