考えても考えても抜けもれが出る、、、という方のための処方箋





思考が漏れる、ということが最近多い。


それは、以前より思考せねばならないことが急激に増えてきており、自身のキャパシティを超えてしまうところがあるということなのか、

それとも、ところどころ漏れてしまうようになる穴が最近発生し、その場所もその穴の埋め方も分かっていないいうことなのか、

はたまた、「思考が漏れる」というところに自らの思考の焦点が当たっているということなのか。


自分の見立てだと、2番目と3番目の複合形な気がしている。



さて、この「思考が漏れる」という現象について俯瞰して考えてみた時に、ただ単に自身のみにて影響があるのなら良いが、その「思考の漏れ」に気がつくのは、基本的に誰かとのやりとりを通してであるということに気づく。
自分の中だけで考えている時に、そもそもその思考自体が漏れていると理解することは困難だ。
(自分に疑惑の念をかけて発見するという手段はあるが、それも結局自身の思考の範疇だ。)

つまりは、人間関係の中でしか「思考の漏れ」は生じ得ないということになる。


では、もっと具体的に考えると、その人間関係とはどのような関係性を有する相手のことだろうか。

友人はどうだろうか。
純粋に仲が良い友人と会話を連ねている中で、おそらく「漏れ」は生じない。単純に「考えていなかった」「知らなかった」あたりで済ませ、特に互いに違和感はないだろう。

では、恋人はどうだろうか。
これも友人に同じく、会話を連ねる中で「漏れ」は生じないだろう。単純に「考えていなかった」「知らなかった」あたりで済ませ、特に互いに違和感はないだろう。(多少の喧嘩は発生するかもしれないが)

では、家族はどうだろうか。
普段生活する中で、「やってって言われてたのにできていない」「ごめん、忘れてた、、、」など、容易に想像できるやりとりである。「思考の漏れ」はそこに存在しそうだ。

では、上司・同僚など会社の人間はどうだろうか。
会話を進める中で、「あ、それやれてない!」「考えてもみなかった、、考えないと、、」などと「思考が漏れる」に該当するような事象は発生するだろう。その「漏れ」により、相手に多少なりとも手間をかけたり、悪いケースであれば迷惑をかける。

では、顧客やパートナー企業はどうだろうか。
これも上司・同僚と同じく、「すみません、それできてないです」「考えが及んでいませんでした。すぐにやりますね」などと、「思考が漏れる」に該当するような事象は発生するだろう。その「漏れ」により、相手に多少なりとも時間を割いてもらったり、悪いケースであれば関係がこじれる。


、、、と、上記は私自身の感覚であるが、ここで「思考の漏れ」が生じる相手について改めてまとめてみると、大なり小なり、利害が生じる関係性である。
通常働いている上で使う利害関係者とは違いより広義ではあるが、自らのした(しない)思考により相手の時間の使い方に影響を及ぼしてしまうケースだ。




昨今、利害関係者のタイプは実に多様になってきている。
働き方という面でも正社員、派遣社員、時短勤務、在宅勤務、産休、介護休、育児休、再雇用、シニア活用、、、など多岐に渡れば、
人という面でも人種、宗教、食文化、国籍、言語、、、、など多岐に渡る。

タイプが多様化するということは、自身との共通項が少なくなるということ、
共通項が少なくなるということは、それだけ互いの背景が分からない中でコトを進めていく必要があるということで、
それは同時に、より一層「思考の漏れ」が発生するということでもある。

これから更に多様な社会に進んでいくにあたり、そもそも「思考の漏れ」をなくすことはどんどん困難な時代に突入していく。




そんな中、「思考の漏れ」が生じることを前提とした生活をおくれることが急務なのではなかろうか。

では、その生活をおくるために必要なこと、それは何か。

それは、相手との「関係の質」を高めておくということだと私は捉える。




ここで言う「関係の質」とは、MITのダニエル・キム教授が提唱した「組織の成功循環モデル」の1つの「質」である。以下にこの理論の説明を簡単にしてみよう。
http://164s.net/2279.html

簡単に説明すると、この循環には2つの意味がある。バッドサイクルとグッドサイクルだ。

ーバッドサイクル
ビジネスにおいては、「結果の質」が求められることが多く、その質を高めるために「行動の質」に力を入れがち。ただ、その「結果の質」から入ってしまうと「関係の質」が悪化し、となると「思考の質」も下がり、最終的に「行動の質」「結果の質」も下がりますよね、いう悪循環のこと。

ーグッドサイクル
上記の悪循環ではなく、まずは「関係の質」から入ること。相手との関係をとても良いものにし、何か悪い事象があってもすぐにざっくばらんに話せる状態にしておくことで、「思考の質」つまり考えるレベルが上がる。そこが上がると「行動の質」も、ひいては「結果の質」も変わる、それがまたさらに「関係の質」を高めていく、そんな好循環のことだ。



この「思考の漏れ」の話も、ここに帰結する。

バッドサイクルに陥る中での「思考の漏れ」は、相手との利害関係を強めるという単発の話ではなく、その後のサイクルにも多大なる影響を与える。

だが、グッドサイクルの中での「思考の漏れ」は、相手との利害関係に多少の影響を及ぼしつつもすでに「関係の質」が高まっている状態なので、バッドサイクルほどの影響は出ない。むしろ、その「漏れ」を防ぐ方策まで一緒に考えてくれたり、共に事態を解決に導いてくれるかもしれない。
(「思考の漏れ」というのは「思考の質」が下がるということなので、それを繰り返し続けると次第に「関係の質」も下がる、これには注意が必要だ。)



もちろん、「思考の漏れ」を出さないための努力は必要だ。自らそれを解決し、真に「思考の質」を上げることは大事だ。

だが、それともっとうまく丁寧に付き合っていこうとするなら、その相手との「関係の質」を変えていってみてはいかがだろうか。

きっと、これまでとは違うこれからが待っている。



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