違った視点から見るのではなく、まずは徹底して自分なりの視点から見ること。そうでなければ、そもそもその”違った視点”には気づけない。



いろんな視点から物事を見よう。

人の気持ちになって考えてみよう。


誰しもがいずれかの時期に聞いたことのある言葉だ。
以下、それぞれの時期に言っても聞いてもおかしくない言葉たちであろう。

社会人:「もっといろんな角度から見てこのシステムの問題点を見つけ出してみよう」
大学生:「、、、彼女の身にもなってみてよ」
高校生:「理系だったらこんなの簡単に解けるんだろうなーいいよなー」
中学生:「第二中のやつらだったらこっちに乗り込んでくるんだろうな」
小学生:「麻里子先生だったら嫌がると思うなー」
幼稚園児:「省吾くんの気持ちになって考えてみようね♩」

要するに、物心つくころから生活するには必要なスキルだと教え込まれるものである。

このスキルがあると認識される人間は比較的順調に人との関係性を保ちながら育ち、逆にこのスキルがあまりないと認識される人間はどちらかというと世間の輪から除外されていく。


私はどちらかというと後者であり、思い返すエピソードには事欠かない。
例えば高校生の時の話だ。所属していた学外のサークル(今でいう学生団体と呼ばれるものの走りだろうか)をクビになってほぼ全メンバーと縁が切れたことがあるのだが、誤解を恐れずに言えば、その頃の私は自身の考えが全て正しく、それに異する物事は全て悪だと認識していた。今思えば「あの頃はバカだったなー!」と思えるのだが、その時の自分は何が悪いのか全く分からず、ただただ自分の殻の中に閉じこもったものだ。

おそらくこのような「自分の視点しか持たず」「人の気持ちを考えられず」という理由にて痛い思いをした方は多いだろうし、痛い目を見た方が多いからこそ幼少期より大人たちにしつこく言われるのだと思う。
これからもこの話は延々と受け継がれているのだとは思うのだが、私は最近考えを改めた。

というのも、そもそも人はそれぞれ独自の視点しか持たないのであって、自身の視点がどんなものなのかを認識しないとそもそも他の視点を認識することも難しいはずだと思うに至ったのだ。


ガールボスという話をご存知だろうか。
Nasty Gal」というアパレルショップを経営する、ソフィア・アモルーソという女性の人生を描いた本で、現在ではNetfrixでも彼女を題材にしたドラマを放送しているので、ぜひご覧いただきたい。

#GIRLBOSS(ガールボス) 万引きやゴミあさりをしていたギャルがたった8年で100億円企業を作り上げた話(ソフィア・アモルーソ

盗み、ゴミ箱をあさるなどなどを重ね、いわゆる不良な10代〜20代を過ごした女の子が窮地に立たされたことをきっかけにふと始めたイーベイでの古着販売が大繁盛。8年で企業価値100億円の企業を作るという、よくあるアメリカンドリームの塊のような話である。もちろん、実話だ。(私も100億円の企業を作りたいとドラマを見ながらふと思ったものだ)


ドラマの最初はこんな言葉で始まる。
「社会はすべての人を1つの箱に入れたがる」

どの仕事も即座にクビになっていく中で彼女はこの言葉を持って社会を批判し自分を呪うわけだが、彼女はひたすらにその箱に入らず、自分で箱を作り続け途方も無い道のりの果て、『フォーブス』誌の「30歳未満で最も影響力が大きいファッションリーダー30人」に選出され、『インク』誌では「全米最速の成長を遂げた小売業」と評された。

彼女は自分が本当に作りたいものだけを作る、と言ってすでに社長業を引退しているのだが、それにしてもその貫き方はなんて勇ましいのだろうか。

ただここで言いたいことはそんなことではなく、私はこの本、そしてドラマを観終わった時に、単にアメリカンドリームを描いた物語ではなく、他者を理解するために自分だけの視点を持つことを説く物語だなと思ったのだ。


この作中において、彼女は様々な壁を対峙することになる。共同創業者と相対する話、資金がそこをつく話、もちろんドラマチックに起承転結を繋ぐためにあえて登場させているとも思うのだが、100億の会社であればそれ相応の壁が随所にあり、その貫く精神・行動は多くの人が理解しきれないほどの楽しさと苦痛を伴うものだろう。(まだまだ弱く小さいがベンチャーを運営する身として、その苦痛はむしろ自ら受けていかねばならないと思いつつ、想像するだけで戦慄する)

その楽しさと苦痛というような抽象的な感覚がポイントなのだ。

こういう立場の私はこう思う、ああいう立場のあなたはああ思う、というように分離して考えていたら結局は想像するしかなく、その違いを正確に認識することは難しい。
だが、そもそも人が得る感覚というものは、種類が限られている。
喜・怒・愛・楽。四字熟語にもあるように、感覚を最もまとめ上げたらこれらに収束するのである。どんな経験をしようが、感じることはこれからのどれかに内包されるはずだ。


自分だけの視点、はじめはなかなか理解されにくいかもしれないが、それを貫けば貫くほど、多くの感覚を手にしてゆく。
成功する創業者は「戦争」「病気」「事故」などいわゆる死線を超えた人が多いとはよく言われる話だが、人生を有限だと認識する、人の役に立ちたいと心の底から思う、それだけでなく、このように自身の視点を研ぎ澄ませることで違いをより強く認識することも成功の一因なのではないだろうか。

そう考えると、最初から違った視点を想像するのではなくて、まずは自分なりの視点というものが何か、自分なりの思うところを築いていったほうが、最終的に違いを認識するためには必要なのではないか。そう考えるのだ。


さて、ここで質問。

あなたはどんな視点を持つ人間だろうか。

しばし一緒にお考えいただきたい。

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