70年に渡り世界中の建築物を創ってきた安藤忠男さんから学ぶ、『"本質的"なイノベーション』の起こし方。
『安藤忠雄展-挑戦- 国立新美術館開館10周年』に行ってきました。
安藤さんの設計した建物、ご存知でしょうか。
多くの方が知ってそうな建物ですと、例えばこちら。
■表参道ヒルズ(2006年)
■渋谷駅 東急線(2012年)
多くの方が一度は利用したことがあるかもしれません。
他にも、世界中にある有名な建築物は、例えばこんなものがあったりします。
■光の教会、茨木春日丘教会(1989年)
■南岳山光明寺(2000年)
■上海保利大劇場(2013年)
今回の展示会では、安藤さんが生涯かけて創ってきた建築物の設計図・経緯・模型・実物のレプリカなどが、これでもかというくらい展示されています。
建築の家に生まれ、幼少期は建物の設計図や世界中の建築物の写真集が絵本・おもちゃ替わりとして与えられ育った身としては、もうヨダレものなのです。
あまりに楽しくて、3時間くらいひたすら目を凝らして見て読んで観察していました。
※なんと、「光の教会」の実物大の再現レプリカもあるんですよ。(写真撮影可能なところはここしかなく、、、)
そんな展示会の終わりあたりで、安藤さんが『挑戦』について語った文章が壁面に書かれていました。
あるもの(建物に刻まれた記憶)を生かして、ないもの(未来へとつながる新たな可能性)をつくるという挑戦です。
彼の作品を見ていると、もともとの国・土地が持つ特徴を引き出しつつも、そこに完全なる新たなものを和えて、旧も新も互いが互いに引き立て合うというような関係を創り出しています。
例えば、アートの島として有名な、瀬戸内にある直島。
ここはベネッセと安藤さんが組んで島全体に様々な建築物・モニュメントがあることで有名ですが、以下のような建築物。
日本の昔ながらの言葉でいうと、『借景』とでも呼ぶのでしょうか。
建物だけでなく、空というものを建物に一体化させるようなこの創り方。
実際にこちらに私も言ったことがあるのですが、昼と夜でまた得る感覚がとても異なっており、心になんとも心地よい安定感を生んでくれる、そんな空間です。
以前こんな記事を書いたことがあります。
■なぜ、最新であるべき『伝統』が最古のものに成り果てたのか。
少し、『伝燈』について引用します。
比叡山延暦寺をご存知でしょうか。
1200年前に最澄が建てたお寺ですが、こちらには「不滅の法燈」と呼ばれる火が1200年前から今に至るまで灯っています。
『あきらけく 後のほとけの み世までも 光り伝えへよ 法のともしび』
この燈火のように、未来永劫、仏の教えが世の闇を照らして人を導きますようにと言う願いを込めた歌と共に最澄が灯した火です。
これ、比叡山の開山以来一度も消えていないそうなのです。実に驚きですよね。
みなさん、火を灯し続ける時に必要なものをご存知ですか?
イメージしていただくと分かりやすいのですが、点けた蝋燭は、放置していればいずれ消えてしまいます。
この「不滅の法燈」も同じ。放置すれば消えてしまい、1200年間が途切れます。
守り伝えていくために欠かすことのできないこと。それは、常に油を注ぎ続けることです。常に油を注ぎ続けることで、その火をこれからの未来に向かって灯り続けます。
※油を注ぐのを忘れたらどうなるでしょう?火は消えますよね。それが「油断」という言葉の始まりらしいですよ。
これこそが、『伝統』の本質なわけです。昔と同じものをひたすら守っていくことが大切なわけではありません。
最初の思いを継ぐためには、常に新しい油を注ぎ足すことが必要なのです。
未だに世界中で同時に様々な建築物を創り続けている安藤さん。
彼こそが本質的に『伝燈』を体現している方だと、私は感じます。
ある意味、今の言葉で言うと『イノベーション』という言い方になるかもしれません。
今この瞬間に『イノベーション』を起こしたいと思う国・企業・個人が学ぶべきは、彼のその建築物や思想なのではないでしょうか。
ただ、『イノベーション』と言葉が言葉だけで走り過ぎている昨今、少なくとも、安藤さんの展示会を楽しめない方は『イノベーション』という言葉に踊らされているのでは、、、と思わざるを得ません。
楽しめる方は、安藤さんの建築物を知るだけでなく、ぜひその建築物に足を運んでみてください。
きっと、その力をご自身の一部に取り込んで普段の様々な創出・普及に活かせるはずです。
少なくとも、私はこういう作品たちを観ることが、私自身の仕事のレベルアップ・感性のレベルアップに直結しているのだと、そう信じています。
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